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伝音再建法の分類と名称について

伝音再建法の分類と名称について(2000年)
Classification and Nomenclature of Ossicular Reconstruction (2000)

日本耳科学会(理事長;柳原 尚明)
用語委員 森山 寛、山本 悦生、湯浅 涼

はじめに

 現在、世界各国でまた各耳科手術者によりそれぞれ異なった各種の耳小骨形成の分類が行われている。一方、本邦においては、オトマイクロサージャリー研究会および旧臨床耳科学会の用語委員会において提案された“中耳炎とその後遺症に対する手術法の分類と名称”に記載されている伝音系形成手技の分類すなわち Wullstein の分類を基本とした、 I 型, II 型, III 型(変法), IV 型(変法)が 20 年以上にわたり使用されてきた。またこの分類は、アメリカの Farrior(1971)の手術の状態より(according to the basic pathologic anatomy at the completion of the surgery)分類した考えを取り入れている。

 しかしながら諸外国との違いもあり、今回、海外での分類との関連性ならびに手技の適確な評価をめざし新たに耳小骨形成の分類を行った。 III 型変法、 IV 型変法(modified type III , IV )をどのように取り扱うかが、今回の提案の要点である。

 同時にアブミ骨手術の分類と名称、いわゆる 0 型の取り扱いについても検討した。

耳小骨形成術 ossiculoplasty の分類と名称―提案―

基本概念;分類するに際しては、機能の観点(伝音理論 sound transmission)ではなく、従来と同様に、行った形成手技(形成完了時の形態)により行った。すなわち sound transmission ということであれば、正常なアブミ骨頭上にコルメラを立てても、アブミ骨底板上にコルメラを立てても同じであるが、手術条件や術後の聴力成績は異なる。従って従来と同様に形態的に分け、前者を III 型-○、後者は IV 型-○とした。

名称と分類;鼓室形成術 I 型、 II 型、 III 型( III-c , III-i , III-r)、 IV 型( IV-c , IV-i)とする。すなわちtympanoplasty type I ,type II ,type III with columella, interposition or reposition 、type IV with columella or interposition となる。

★ I 型;ほぼ3 耳小骨が残り正常な形態が保たれる(生理的な伝音機構)(図1 )。“Wullstein-I 型に相当”

図1
図1

★ II 型;キヌタ(砧)骨上に鼓膜を形成する(図2 、3 )。“Wullstein-II 型に相当”


図2

図3

★ III 型;アブミ(鐙)骨上部構造に連鎖再建する。すなわちアブミ骨の上部構造を利用し、この上に連鎖を再建し伝音効果の増大を図る。形成の仕方により名称が異なる。

コルメラ columella を使用した時は III 型-columella ( III-c )。耳小骨の間に挿入 interposition あるいはreposition した場合は III 型-interposition ( III-i )、 III 型-reposition ( III-r )とする。

したがって名称は、鼓室形成術 III-c , III-i , III-r すなわち tympanoplasty type III with columella 、interposition or reposition となる。

III-c ;アブミ骨上部構造の上にコルメラ columella をたてた例はをつける(図4 、5 )。

すなわちツチ骨、キヌタ骨を経由せずアブミ骨上部構造に伝音させる。
【 III 型コルメラ;type III with columella (columella on stapes )】


図4

図5
  (上部構造の一部が消失)


III-i ;アブミ骨とツチ骨との間、アブミ骨とキヌタ骨の間に挿入 interposition した例はをつける。Malleus Incus assembly 、Malleostapediopexy また incus を挿入するので incus interposition などと呼称されるのがこれに相当する(図6 、7 、8 )。

【 III 型インターポジション;type III with interposition (interposition on stapes )】


図6

図7

図8
III-r ;キヌタ骨をreposition しアブミ骨(頭)に連鎖形成した例はをつける(図9 )。

【 III 型レポジション;type III with reposition (reposition on stapes )】


図9
III ;アブミ骨(頭)上に鼓膜を形成する(図10 )。“Wullstein-III 型に相当”

図10

★ IV 型;アブミ骨底板上に連鎖の再建を行う。

形成の仕方によりコルメラcolumella を使用した例は、 IV 型-columella ( IV-c )。アブミ骨底板とキヌタ骨あるいはツチ骨との間に挿入interposition した場合は IV 型-interposition ( IV-i )とする。たとえアブミ骨脚が部分的に残存している例でも底板上に再建すれば IV 型となる。
名称は、鼓室形成術 IV-c , IV-i 、すなわちtympanoplasty type IV with columella or interpositionとなる。

・ IV-c ;アブミ骨底板の上にコルメラ columella をたてた例は c をつける(図11 )。

TM (tympanic membrane )―footplate columella などと呼称されるのがこれに相当する。

【IV 型コルメラ;type IV with columella (columella on footplate )】


図11
・ IV-i ;アブミ骨底板上とツチ骨、あるいは底板とキヌタ骨との間に挿入interposition した例は をつける(図12 、13 )。

【 IV 型インターポジション;type IV with interposition (interposition on footplate )】


図12

図13
・ IV ;アブミ骨底板上に鼓膜を形成する(図14 )。“Wullstein-IV 型に相当”

図14

アブミ骨手術

卵円窓(前庭窓)を開窓するアブミ骨手術や可動術に関する形成は、“耳小骨形成”とは別項目とする。

  1. stapedotomy 前庭窓開窓術;small fenestra stapedectomy (SFS )
    ただしツチ骨に直接連絡した場合はstapedotomy-M (SFS-M )とする。
  2. stapedectomy アブミ骨摘出術
    ・底板を全部摘出すればtotal stapedectomy (TS )
    ・部分的であればpartial stapedectomy (PS )
    ただしツチ骨に直接連絡した場合はstapedectomy-M (TS-M 、PS-M )とする
  3. stapes mobilization アブミ骨可動術

しばしば使用されている0 型について

 planned staged tympanoplasty の1st stage の際に、しばしば0 型と記載されているが、この staged 手術の第一段階はあくまで病変の除去と鼓膜の形成であり、耳小骨形成は含まれていない。また鼓室形成術の本来の意味する、1 、病変を除去し中耳腔を再建、2 、鼓室腔を確保するため鼓膜を形成(正円窓遮蔽)、3 、伝音系(連鎖)の再建、にあてはまらない。このような点より鼓室形成術においては0 型は使用すべきでないと考えられる。

 しかしながら高度難聴例や聾の症例においては、中耳根治手術ではなく、病変除去と鼓膜形成(乾燥化目的のため)のみの術式が行われることもあり、wo ;without ossiculoplasty として新しい分類のなかに組み入れる(英文では略さないでspell out する)。

 したがって鼓室形成術wo, tympanoplasty without ossiculoplasty や、段階手術の例には、段階的鼓室形成術(一回目)wo, planned staged tympanoplasty without ossiculoplasty と記載する。

参考資料

  1. 耳科学会用語委員会;中耳炎とその後遺症に対する手術法の分類と名称、
    鼓室形成術、野村恭也編、耳鼻咽喉科・頭頸部外科MOOK 14 ,巻末、1989
  2. 野村恭也、他;鼓室形成術の分類(外国)、鼓室形成術、野村恭也編、耳鼻咽喉科・頭頸部外科MOOK 14,26-33 、1989

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最終更新: 2012年4月12日