日本耳科学会 一般社団法人 日本耳科学会 事務局
〒108-0073 東京都港区三田3-4-9
リーラハイツヒジリザカ602号
TEL 03-6435-2555
FAX 03-6435-2556
E-mail: otology@blue.ocn.ne.jp
The Japan Otological Society
 

慢性中耳炎に対する鼓室形成術の術式・アプローチの名称について

慢性中耳炎に対する鼓室形成術Tympanoplasty の術式・アプローチの名称について(2000年)
Nomenclature of Surgical Methods and Approarches in Tympanoplasty for Chronic Otitis Media(2000)

日本耳科学会(理事長;柳原尚明)
用語委員会 森山 寛、山本 悦生、湯浅 涼

 従来、鼓室形成術の術式・アプローチについては、各施設において独自の名称が使用され、それにより術後成績の発表が行われてきた傾向も否めなかった。しかし共通した名称を使用しないということは、各施設間での術式や手技の評価が十分には行い得ないという一面があり、混乱を招く可能性がある。そこで当委員会ではこの点を解消すべく検討を加えることにした。旧日本臨床耳科学会用語委員会のメンバーを中心に、長い間第一線で活躍されている耳科手術の専門家である諸先生方との間で頻回なる意見交換を行い、修正を加えつつこのような案を作成した。この提案においても十分でない点もあり、また日本語と英語との一致を可及的試みたが表現できない部分もある。今後の資料おび検討課題としたい。

鼓室開放術 tympanotomy には、
1) epi-tympanotomy (atticotomy );上鼓室開放
2) meso-tympanotomy ;中鼓室開放(exploratory tympanotomy を含む)
3) hypo-tympanotomy ;下鼓室開放(一般的には facial recess を開放して行うPosterior tympanotomy (Jansen 1958) を意味する)
があるが、そのアプローチには経(骨皮質)乳突腔的transcortical mastoidectomy なもの(かつて posterior アプローチと言われていたもの)と、経外耳道的 transcanal (transmeatal;endomeatal)な アプローチ(いわゆるanterior アプローチ)の二つのルートがある。
これを基本として中耳真珠腫など慢性中耳炎に対する鼓室形成術 tympanoplasty の術式・アプローチの分類を 試みた。

 また昭和48 年より、オトマイクロサージャリー研究会手術用語委員会ならびに臨床耳科学会用語委員会 で検討された“中耳炎とその後遺症に対する手術法の分類と名称”については、臨床耳科11 巻4 7 2 ―4 7 5 , 1984 および耳鼻咽喉科・頭頸部外科MOOK14 巻;鼓室形成術(野村恭也編)の巻末を参照されたい。

1 .Tympanoplasty without mastoidectomy ―乳突非削開(型)鼓室形成術―

 狭義の鼓室形成術:乳突腔の非削開によって行われた鼓室形成術を意味し、以下の乳突削開術などが行われたものと明確に分ける。
 ただし経外耳道的に上鼓室を開放しても乳突腔削開術とはならない。また上鼓室に限局する真珠腫などの疾患に対するtranscanal atticotomy は、Tympanoplasty with transcanal atticotomy としてここに分類される。


2 .Tympanoplasty with mastoidectomy ―乳突削開(型)鼓室形成術―

下記の2 つに大別される。 また antrotomy は mastoidectomy に含まれる。従って attico ・ antrotomy の施行例はTympanoplasty with attico ・ antrotomy としてここに分類される。
A )Canal wall down tympanoplasty ―外耳道後壁削除(型)鼓室形成術―
Open method tympanoplasty ―乳突開放(型)鼓室形成術―
B )Canal wall up tympanoplasty ―外耳道後壁保存(型)鼓室形成術―
Closed method tympanoplasty ―乳突閉鎖(型)鼓室形成術―
mastoidectomy を行い、かつ外耳道後壁を保存した術式、すなわち削開した乳突腔を外耳道に開 放しない(closed method ;Portmann 1968 )術式である。
Intact Canal Wall Technique ;ICWT (Sheehy 1967 )やCombined Approach Tympanoplasty ; CAT (Smyth 1969 )などがこれに相当する。しかしICWT やCAT などの術式を使用するには facial recess を開放するPosterior tympanotomy (Jansen 1958 )を行うことが条件となる。 ただしCanal wall up tympanoplasty という術式名称を使用するときはfacial recess の開放の有 無はとくに条件とはならない。
★Canal wall up (down )tympanoplasty
外耳道後壁骨の処置を主体とした考え方
★Closed (Open )method tympanoplasty
乳突腔を主体とした考え方

(注)以上の様に分けられるが、closed という用語は、1 9 60 ―7 0 年代の本来の定義から離れて、個人より 別々の意味で使用されているのが現状であり、closed の意味が統一されておらず紛らわしい。従っ てできるだけCanal wall up (down )という術式名称を使用する。 しかしながら、上記以外各手技も行われている。施設によっては以下の術式が主流となっている 所もあるため下記の付帯手技を加えた。


3 .併記(付帯手技)

イ)Canal reconstruction ―外耳道再建術―
上鼓室側壁や外耳道後壁を再建したもの(従来のscutumplasty やopen then closed が含まれる)
ロ)Mastoid obliteration ―乳突腔充填術―
削開した(されている)乳突腔を充填する。但し外耳道後壁が残存しているか否かは問題としない。 (Partial mastoid obliteration 乳突腔部分充填術;乳突尖端部などを部分的に充填し、開放乳突腔 を少しでも狭くする)
ハ)(Planned) Staged tympanoplasty ―段階的鼓室形成術―
ニ)Revision tympanoplasty ―鼓室形成術の再手術―
従来のRevision tympanoplasty (修正手術)、Reoperation (再手術)、Second look operation (点検手術)などにあたる。

《記載例》

  • 外耳道削除(型)鼓室形成術・外耳道再建術
    Canal wall down tympanoplasty with canal reconstruction
  • 外耳道削除(型)鼓室形成術・乳突腔充填術
    Canal wall down tympanoplasty with mastoid obliteration
  • 外耳道保存(型)鼓室形成術・乳突腔充填術
    Canal wall up tympanoplasty with mastoid obliteration
  • 外耳道再建(型)鼓室形成術・上鼓室削開術
    Tympanoplasty with atticotomy and canal reconstruction
  • 外耳道再建(型)鼓室形成術・乳突腔充填術
    Tympanoplasty with canal reconstruction and mastoid obliteration
  • 鼓室形成術の再手術・乳突腔充填術
    Revision tympanoplasty with mastoid obliteration (耳小骨形成法を明記するときは、鼓室形成術 Tympanoplasty の単語の直ぐあとにタイプ type と付記する)


4 、その他

以下の術式は、鼓室形成を行う手技ではないので、従来どおりの名称を使う。

Radical mastoidectomy ―中耳根本(治)手術―
Bondy Modified Radical mastoidectomy ―聴保中耳根本(治)手術―
Simple mastoidectomy ;Schwartz の単乳突腔削開術
Exploratory tympanotomy ―試験的鼓室開放術― など

一般社団法人 日本耳科学会


→このページのtop


最終更新: 2012年4月12日