一般社団法人 日本耳科学会

耳の病気ガイド

外リンパ瘻(がいリンパろう)

外リンパ瘻がいリンパろうとは?

外リンパ瘻(ろう)は、内耳と中耳の間に小さな穴(医学的には“瘻孔”と呼びます)ができ、内耳の液体(外リンパ)が漏れることで難聴やめまいを引き起こす病気です。
正確な統計はありませんが、年間の発症数はおよそ1万人と推測されています。
症状の出方はさまざまで、

  • 難聴だけ
  • めまいだけ
  • 難聴とめまいの両方

いずれの場合もあります。

難聴は軽度(少し聞こえにくい)から高度(全く聞こえない)まで幅広く、耳鳴りや耳の詰まった感じだけが出ることもあります。めまいも、「ふらつき」「回転性」「不安定感」などさまざまです。そのため、難聴、めまいの強さ、種類にかかわらず外リンパ瘻(ろう)の可能性があります。
特に「突発性難聴」や「メニエール病」と診断されている方の中に、実際は外リンパ瘻(ろう)であるケースもあります。

外リンパろうを疑うポイント

次の1~5の特徴のいずれかがある場合は注意が必要です。

  1. 難聴、めまいの症状が出る前に耳や頭に圧がかかる行為があった

    外リンパ瘻(ろう)を疑う上で最も重要なのは発症のきっかけです。
    以下のような行為の後に難聴やめまいが出た場合は要注意です。

    • 強いくしゃみや咳、重い物を持ち上げたとき(耳に圧力がかかる動作)
    • ダイビングや飛行機などによる気圧の変化
    • 頭のけがや耳の手術後などの外傷

    症状は直後に出ることもあれば、数日〜1週間後に出ることもあります。また強い鼻かみや筋トレなど日常的な行為が原因になることもあります。

    • 飛行機に乗った3日後に難聴を自覚した
    • 筋トレ習慣があり、歩行時のふらつきが出てきた

    ただし、原因がはっきりしないこともあります。

  2. 「突発性難聴」と言われたが、聞こえが変動する、めまいが治らない

    突発性難聴は、急に聞こえが悪くなった後にさらに悪化することは稀です。また、改善した聴力が再び悪化することもほとんどありません。そのため、聴力が良くなったり悪くなったりする場合は外リンパ瘻(ろう)の可能性があります。また突発性難聴でもめまいを伴うことはありますが、通常は1〜2週間で治まります。めまいが1か月以上続く場合は注意が必要です。

  3. 「メニエール病」と言われたが、聞こえがどんどん悪くなる、めまいが1日中続く

    メニエール病では低音が聞き取りにくくなり、回転性めまいの発作を繰り返す、という特徴があります。
    一方、外リンパ瘻(ろう)では高音が聞き取りにくくなることが多く、歩行時のふらつきや不安定感を自覚するのが典型的です。

  4. 特徴的な耳鳴りやめまいの自覚がある
    • 水が流れるような耳鳴り(「さらさら」「サー」といった音)
    • 聞こえが悪くなった時に「パチン」という音がした
    • 耳に圧をかけるとめまいがする

    これらはすべての患者さんに出るわけではありませんが、外リンパ瘻(ろう)を疑う重要な手がかりです。

  5. 体位や動作でめまいが変化する

    外リンパ瘻(ろう)では、外リンパが漏れると症状が悪化するため

    • 横になると症状が改善し、立っていると悪化する
    • 歩行時に体の不安定感を感じる

    といった特徴があります。

※外リンパ瘻(ろう)、突発性難聴、メニエール病の症状比較は、表をご参照ください。

外リンパ瘻、突発性難聴、メニエール病の比較

外リンパ瘻(ろう) 突発性難聴 メニエール病
きっかけ

飛行機、鼻かみ、頭を強く打ったなど

無し

無し

難聴

一定していない

突然症状が出て、悪化したり、変化しない

低い音が聞き取りづらく、変動する

めまい

ふらつきが多いが、回転性の場合もある

難聴を自覚したタイミングにめまいが出て、1週間程度で改善する

難聴と同時に自覚する。10分~数時間程度持続する

再発

あり

無し

症状を2回以上繰り返す

検査方法

外リンパ瘻(ろう)が疑われる場合は、聴力検査、平衡機能検査を行います。特に重要なのがCTP検査(Cochlin-tomoprotein検査)です。CTP検査は新しい検査方法で、内耳の液体に含まれるたんぱくを調べる検査です(結果が分かるまで2~4週間要します)。鼓膜の操作を伴うため、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の専門医が行います。
検査は、麻酔をしたうえで鼓膜に小さな切開を加え、生理食塩水を出し入れして検体を採取します。麻酔を含め20分程度で終了し、外来で受けられます。(動画および写真参照)

診断

瘻孔を直接確認するには手術が必要です。そのため、経過、検査結果などを総合的に判断して、外リンパ瘻(ろう)かどうかを判断する場合もあります。

治療法

治療は症状の強さや経過によって異なります。

  1. 安静・保存的治療

    まずは数日〜1週間ほどベッドで安静に過ごし、なるべく耳に圧力がかからないようにします。強い咳や鼻を強くかむことは避け、必要に応じて点滴や薬で症状を症状の改善を図ります。安静により自然に穴がふさがり、症状が改善することもあります。

  2. 手術による治療

    症状が強い場合や保存的治療で改善しない場合は、手術を行うことがあります。手術では、内耳と中耳を隔てる薄い膜(“内耳窓”と呼ばれる部分)を、筋膜や軟骨などで補強・閉鎖し、聴力やめまいの改善を目指します。

まとめ

外リンパ瘻(ろう)は、内耳の外リンパが漏れることで、「難聴」「めまい」を引き起こす病気です。診断には従来の検査に加え、近年はCTP検査という新しい方法も用いられています。治療は安静で自然に改善することもありますが、必要に応じて手術行われます。早期に適切な診断と治療を受けることで、聴力や生活の質の改善が期待できます

CTP検査が可能な施設:CTP検査実施施設一覧(日本耳科学会)